【第2回】中小企業における人的資本経営の勘所
2022年11月21日
もくじ
アリの観察から生まれた組織集団の在り様
2:6:2の法則という考え方があります。
働きアリの観察から生まれた話と言われています。
簡単に確認すると、働きアリの集団は、よく働くアリ2割、普通に働くアリ6割、ほとんど動かず働かないアリ2割に大別されます。
そして、よく働く2割のアリだけを集めて集団形成させても、やはり、2:6:2の割合に分かれていきます。
逆に働かないアリだけで集団形成しても2:6:2に分かれます。
この法則を、企業組織にも当てはめると、多くの組織においてハイパフォーマー2割、普通の求められる成果を出す6割、問題児の2割に分かれる傾向にある。
こうした話です。
新2:6:2の法則
私は、この話をこのようにとらえています。
技術・営業構造・戦略・ビジネスモデルなど会社や部門のコア・コンピタンス(中核的能力)を創り、発展させていく、一言でいえば
成果が上がる仕組みを創る2割の人材。
そして、
仕組みを活用して成果を上げていく6割の人材。
残念ながら、周りが創り育んできた
仕組みをうまく活用できず、成果が上げられない2割の人材。
に分かれる。
掘り下げるとこのように考えています。
エリート教育が全体のためになる
通常の階層別に求められるスキル・マインドセット(過去の経験から、頭の奥深くで固定化された見方・考え方・価値観)を開発する教育は、もちろん全員に一律実施することが必要でしょう。
ただ、それだけでは変革期を迎えるこれからの時代には足りません。
環境変化に適応すべく、先頭を切って市場・競合に向かい、
「組織のコア・コンピタンスを創る二割のリーダー人材」を特別枠でレベル高く育成していく
ことが肝要です。
具体的には、現幹部・管理者層のなかではもちろんですが、中堅・若手などの世代別にコア・コンピタンスを創る一翼を担っている、もしくは創り出していく可能性ある人材を選定します。
そして、個別事情(力量・個性傾向・経験値など)を踏まえた、以下のような環境をつくり計画的に鍛えていきます。
- 成果が上がらず停滞している部門・部署の立て直し。誰もが経験したことのない新規課題の推進など、難易度が高くストレスのかかる課題にあたらせる。
- 外部機関や大学院に派遣して他流試合をさせ、社内では得られない知見をつけさせる。また、優秀な外部人材に触れさせることで力量強化における目標レベルを高める。
- 部門横断型のプロジェクトリーダーに抜擢し、視座を高めて経営者目線で意思決定する訓練をさせる。
- ジョブローテーションを計画的に行い、部門・部署特有の課題や制約を理解させ、多角的な判断ができるようにする。
こうした経験を計画的にさまざま積ませていくなかで、昇進・昇格も行い、各階層・世代で「組織のコア・コンピタンスを創る2割のリーダー人材、人材候補」を切れ目なく育成していく。
こうした施策が、結果的に強い体質の企業を創ることになり、全社員、さまざまなステークホルダーに貢献することとなります。
われわれ中小企業が、人的資本経営を進めるにあたっての重点テーマであると考えています。