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【第5回】検索人材よりも思索人材を

【第5回】検索人材よりも思索人材を

コラム

2023年02月12日

AIがますます身近なものに

最近話題の文書生成AI「チャットGPT」。
大量のデータをAIが学習しており、何らかのコマンド(質問)を入力すれば、瞬時に整理された文章で回答が返ってきます。

たとえば「人的資本経営を進める上でのポイントを二つ挙げれば?」と質問すれば、以下のような文字量・形態で回答されます。

「人的資本経営」のポイントは大きく二つです。
一つは、事業環境変化に適応するための「経営戦略」を“絵に描いた餅”に終わらせず確実に推進していくために、必要な人材調達・計画的育成・適正配置などの「人材戦略」を精度高く策定し、推進することが挙げられます。

二点目が、人的資本状況を顧客・社員・入社希望者・協力会社などのビジネスパートナー、株主・金融機関などの各種ステークホルダーに開示することです。

また、対話型サービスとなっており、続いて「ステークホルダーに開示する上での注意事項は?」と質問すれば、即座に自然な文章で回答されます。

まるで専門家と話しているような形でチャット上の会話が展開していきます。

まだまだ課題は多くありそうですが、AIは身近になってきており、われわれの生活クオリティを高めていきそうです。

光と影の法則

しかし、多くの事柄において「光と影の法則」が生じます。
光が強ければ強いほど、影が濃く深くなるように、プラスの側面が強ければ強いほど、マイナス面も同じレベルで生じることになります。

生物学系のジャンルでは異例のベストセラーとなっている、「生物はなぜ死ぬのか?」の著者である小林武彦さんはAIについて以下のように語っています。

『使い方を間違えるとかなり危険だと思っています。なぜなら、ヒトが人である理由、つまり「考える」ということが激減する可能性があるからです。一度考えることをやめた人類は、それこそAIに頼り続け、「主体の逆転」が起こってしまいます。ヒトのために作ったはずのAIに、ヒトが従属してしまうのです。』
〈講談社現代新書「生物はなぜ死ぬのか」〉

この「考える」ということが激減するという指摘は、インターネットの登場から生じているように感じます。

考える葦

私の学生時代においては、卒業論文を作成するのが一苦労でした。

論文内容をまとめるための材料を集めるために、何件も本屋、図書館を周り、関連する資料を探します。
親や知人・友人に知見ある知り合いはいないか?を聞いて周り、知見がありそうな人に電話をしたり、会いに行き、断片的な情報を得ていました。

そうして得た断片的な情報を基に、さまざまな可能性を思考し、今から想えば拙いものですが自分なりの考えをまとめました。

それから時が過ぎ、インターネットが普及した2000年代においては、圧倒的なスピードで、かつ、よくまとまった論文が作られるようになりました。

ただ、類似テーマの場合は、どれもこれも似たようなものばかりで独自性がありません。いわゆるネット掲載記事のコピペで、繋ぎ合わせたものばかりです。

ビジネスの世界においても当然同じことが生じており、その傾向が増しているように感じます。

社内外を観ていて、検索力は素晴らしいものがあり、よくスピーディーにこれだけ調べてくるなと感嘆する人が増えているように思います。
しかし、他人の考えを提示するだけで、頭に汗をかいてひねり出した自分の考えではないため、独自性は乏しく、仕事の力量はなかなか上がっていきません。

フランスの哲学者パスカルが以下の有名な言葉を遺しています。

「人間は、自然のうちで最も弱い一本の葦にすぎない。 しかしそれは考える葦である」

人は自然界の中で、生物的には弱い存在であるものの、「考える力」があることにより今日の繁栄を得ているということを述べています。

生産性を高めるために、AIを始めとしたさまざまなツールは使用するものの、一方で社員に「深く思考する」ということを促す仕組みづくりや指導を行う。
人的資本向上を図るにあたっては、このバランスを取ることが求められると思います。

この記事の監修・筆者

志水浩
志水浩専務執行役員 統括マネージャー
組織開発・教育研修コンサルタントして30年以上のキャリアを有し、上場企業から中小企業まで幅広い企業の支援を実施中。また、研修・コンサルティングのリピート率は85%以上を誇り、顧客企業・受講生からの信頼は厚い。管理者に対する、成果性の高い教育支援プログラム「パフォーマンス向上プログラム」の開発責任者。
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