【第4回】中小企業で最注力すべき人的資本とは
2023年01月10日
もくじ
働きアリの観察
働きアリの観察から生まれた話として「2:6:2の法則」というものがあります。
働きアリの集団を観察していると、よく働くアリが全体の二割を占める。そして、そこそこ働いているアリが六割程度。残りの二割のアリは、ほとんど働かず怠けている。
そこで、よく働くアリだけをさまざまな集団から選別し、新たな集団を形成させます。
しかし結果は、最強になるであろうという目論見は外れて、やはり2:6:2の割合に分かれてしまう。
逆に、怠け者のアリばかりを集めて集団形成しても、不思議と2:6:2に分かれる。
端的にいえば、このような法則です。
この法則を、企業組織に当てはめて、優秀な人材二割、普通の人材が六割、問題児が二割に分かれる傾向にある。こうしたことがよく語られました。
新2:6:2の法則
私は、この2:6:2の法則を、もう少し掘り下げて以下のように捉えています。
中核技術・営業構造・戦略・ビジネスモデルなど自社のコア・コンピタンス(中核的能力)をつくり、進化させていく。表現を変えれば、成果が上がる仕組みをつくる二割の人材。
自社にある仕組みを活用して、求められる成果を出していく六割の人材。
残念ながら、仕組みをうまく活用できず成果を上げられない二割の人材。
このように捉えられるのではないかと考えています。
では、企業にとって、どの層が重要かといえば当然、仕組みをつくる二割でしょう。
本格的にVUCAワールドと称される変革期を迎えていくこれから時代は、この二割の人材が先頭を切って市場・競合に向き合い、自社のコア・コンピタンスの充実を図っていくことが一層求められます。
仕組みをつくる二割の人材を重点的に鍛える
われわれ日本人は、さまざまな事柄で平等であらねばならないという考え方が浸透していますが、あまりにも平等を金科玉条のように考えていては、結果的に全体がおかしくなると思います。
会社全体の業績が上がることで、皆に恩恵がもたらされます。
その業績を上げる仕組みをつくる人材に、教育機会・資本を優先的に投下することを考えなければなりません。
具体的には、現在の幹部・管理者層のなかの二割はもちろんですが、中堅・若手などの世代別にコア・コンピタンスをつくる一翼を担っている、もしくはつくり出していく可能性のある人材を選抜します。
そして、個別事情を踏まえて以下のような環境を与えて鍛えていきます。
・成果が上がらず停滞している部署の立て直し、誰もが経験したことのない未知の新規事業担当など、難易度が高く負荷が強く生じる体験をさせる
・職位が一段階も二段階も上の人材が集まる外部の場(外部教育機関・組合団体など)に出向かせ、目線(経営者視点)を上げさせる
・部門横断型のプロジェクトに抜擢し、視座を高めて全体最適思考を身に付けさせる
・目先の生産性は落ちるもののジョブ・ローテーションを計画的に行い、人脈づくりと各部門・部署特有の課題や制約を理解させる
資源の少ないわれわれ中小企業においては、こうした施策などを通じて、「仕組みをつくる」「可能性ある人材教育に、時間・資金を優先させていくこと」が肝要だと思います。