【第6回】リスキリングの本質
2023年03月30日
もくじ
変化できる者が生き残る
「強い者が生き残るわけではない。また、賢い者が生き残るわけでもない。変化できる者が生き残る。」
イギリスの博物学者で、有名な進化論の著者ダーウィンが遺したといわれる言葉ですね。
VUCAワールド・第4次産業革命と称される、変化が激しく不確実性の高い時代を生きる我々は、この言葉を真剣に考えなければならない時期を迎えています。
日本政府もこの点に危機感を募らせ、本コラムのテーマである人的資本経営の旗振りを行い、リスキリングについても5年間で1兆円の予算措置を図るなど、さまざまな施策を講じています。
このリスキリングは、現状ではデジタル・リテラシー獲得がほぼ同義語として捉えられます。
もちろん、デジタル・リテラシーの獲得は不可欠であり、社会も企業も、そして個人レベルの生産性を高めていくには必須の要素でしょう。
ただ、より本質的に考えれば、このデジタル・リテラシーだけでこれからの時代に対応できる訳ではありません。
当然、その他の力量も磨くことが求められます。
さまざまな要素が考えられますが、私が重要と考える要素を確認いただきましょう。
独自の仮説を導き出す力
リクルートで数々の新規事業を立ち上げてフェローを務めた後、教育分野に転身して東京都における義務教育初の民間校長就任。
橋下大阪府知事時代には教育政策の特別顧問でもあった藤原和博さん。
独自の切り口で、子供から大人まで“より良く生きていく”ために磨くべき考え方やスキルを提示されています。
日本の戦後教育は、正解をより早く、確実に導き出すことを主眼においた教育を基本としてきました。
イメージでいえば、ジグソーパズルのようなものです。
パズルのピースが当てはまる場所は決まっていて、いかに早く全てのピースをはめ込んでいくのかが求められます。
藤原さんは、こうした正解があるものをスピーディーに回答していく力を「情報処理力」と呼んでいます。
高度経済成長期、表現を変えると大量生産・大量消費の時代は、この「情報処理力」の高い人材が求められていました。
しかし、今はVUCAの時代です。ゴールが決まっていて早く辿り着くことを競う時代ではありません。
営業担当者の方であれば、市場をさまざまな角度から観察・分析し、仮説を立てて市場開拓・深耕策を実行する。
その結果を分析して、また仮説立案・実行を繰り返す。
いわゆるOODAループを回して続けて、成果を上げていくことが求められます。
「これさえやっておけば良い」という定められた正解はなく、いわば自らが正解を創造していくことが問われる時代です。
こうした状況下では、さまざまな情報と培ってきた知識・経験・技術を組み合わせて、
独自の仮説を考え続ける、藤原さんの言葉では「情報編集力」が求められます。
パズル同様に遊びで例えると、小さなブロックを組み立てて独自の創造物をつくる「レゴ」に例えられます。
この「情報編集力」が求められ、力量を高めていくことは私の周りでも多くの方が賛意を示されます。
しかし、現実的に中小企業の現場では、課せられた・言われたことを受動的にこなしていく志向の社員が多く、自ら情報収集し、既存の知識・経験と組み合わせて、創造的な方法をトライ&エラーで取り組む社員は少数です。
やはり、社員の「情報編集力」が高まる仕掛け・仕組みをつくることがわれわれ中小企業においては求められます。
では、どうすれば良いか?
この点に焦点を当てて、次回のコラムで述べていきます。