【第3回】評価と業績のX状態
2022年11月21日
もくじ
人事評価制度の目的とは
われわれ中小企業においても、内容は変わるものの多くの企業で人事評価制度が導入されています。
この評価制度の主要な目的は以下のものになるでしょう。
①公平な処遇
社員に求められる具体的な業績成果、主要活動プロセス、能力開発事項を網羅した評価シートを、職種や等級別に作成し、給与・賞与・昇進などの処遇に反映させる。
努力に対して公平に報いる仕組みをつくり、モチベーション喚起と不満抑制を図る。
②経営方針の推進
経営理念(ミッション・ビジョン・バリュー)や経営計画内容を評価項目に織り込んで、経営方針の浸透・推進を促す。
③人材育成
現在から未来にかけて、階層別・職種別に求める成果、言動、スキル、マインドセット(過去の経験から、頭の奥深くで固定化された見方・考え方・価値観)を具体的に明示し、社員の自己錬磨の指針とする。
また、上司にとっては育成指針として、人材育成を促す。
主要な目的はこの三つに集約されるでしょう。
この評価制度において、時にこのような状況に陥る企業があります。
年々、社員の評価点数が向上して給与も昇進者も増えている。
しかしながら、業績は年々下降していくばかりでジリ貧傾向が続いている。
評価(処遇)と業績が「X」を描く状態に陥ってしまっている。
「経営戦略」と「人材戦略」の連動の中心要素
この原因は、もちろん様々な要素が考えられるわけですが、主要な要素の一つとして中長期的な環境変化に対応すべく立案した経営戦略の推進がなされていない。
さらに掘り下げると、その戦略を推進できる力量をもった人材が絶対的に足りない・いないということが挙げられます。
おわかりのとおり、先に記載した評価制度の目的の
②経営方針の推進
③人材育成
が十分に検討・反映されていないことが挙げられます。
具体的にいえば、
- 経営方針が変化しているものの評価項目は何ら変わっていない。
- そもそも経営方針の推進に関わる評価項目が織り込まれていない。
人材のスキル・マインドセット開発に関しては、
- 将来の環境変化を踏まえて、3年・5年先に社員全体・職種別に求められるスキル・マインドセットが検討されていない。
- 結果的に、目先の業務をまわすことに関連する項目しか盛り込まれていない。
こうした状況に陥っています。
自ら、数年先の自社・自部門・自身を取り巻く環境変化(市場・顧客ニーズ、競争状況、関連技術の革新状態など)を先読みして、自らのスキルを進化・発展させていく。
時には、全く取り組んでこなかった、今話題のリスキリング(学び直し)を図る。
このような取り組みを自発的に行う社員が多ければ問題はありませんが、このようなスタンスを持つ社員は少数です。
やはり、組織的な対応が必要です。
そして、その中核要素が評価制度です。多くのケースにおいて、人は評価されることには注力をしますが、評価されないことは力が入りません。
人的資本経営の「経営戦略」と「人材戦略」の連動という要素の中心が、人事評価制度となります。
未来の環境変化に対応するための評価制度となり得ているか?定期的に見直すことが求められます。