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人的資本の情報開示における動向

人的資本の情報開示における動向

お役立ち情報

2022年11月21日

人的資本の情報開示における動向

近年、諸外国だけでなく日本でも人的資本の情報開示ニーズが高まっています。
これまで売上・収益・利益率などの有形資産が企業の価値を左右すると考えられてきましたが、近年は従業員の質や業務ノウハウなど無形資産も重要視されるようになりました。
その結果、ステークホルダーからの信頼を集め新規人材や顧客を獲得するためにも、自社が持つ人的資本について開示する企業が増えています。

本記事では、人的資本の情報開示における動向について解説します。

人的資本とは?

まず人的資本について確認しましょう。
人的資本とは、自社で働く人材を資本のひとつとして捉える考え方のことです。
「ヒト」「モノ」「カネ」の資本のうち、特に「自社で働くヒト」にフォーカスを当てた考え方と言えるでしょう。

「人的資本経営」という単語で使われることも多く、ストレスフリーかつウェルビーイングに働く従業員が多いほど、経営に成功しているという見方がされるようになりました。
もともとは2019年に米国証券取引委員会が発表した「投資家諮問委員会の勧告 人的資本管理の開示」により注目を集めるようになりましたが、近年は日本でも人的資本の情報開示に積極的な企業が増えています。

日本における人的資本の情報開示の動向

上場企業を中心に、日本でも人的資本の情報開示に関するニーズが高まっている理由として、株式市場において有形資産だけでなく無形資産の保有状況を重視するトレンドが生じてきたことがあります。
また、少子高齢化が続き労働人口が減少することを受け、人的生産性向上が不可欠であることも重要要素として挙げられます。

こうした状況を受けて、政府方針も大きく転換しました。下記で詳しく解説します。

政府方針の転換

内閣官房非財務情報可視化研究会は、人的資本の観点を含むサステナビリティ経営ニーズの高まりを受けて「人的資本可視化指針」を公表しています。

これまでコスト要因であると考えられていた人的資本投資が、実は企業価値向上を支える要素であり競争優位を形成すると明言されました。
人的資本への効果的な投資を加速化できれば従業員・投資家・地域に対するメリットも多いとし、企業単位ではなく国単位で人的資本経営に着手すべきとされたのです。

2023年度には人的資本開示をスタートすべきとしており、同時に関連法令も多数整備されるだろうと予想されています。

人材戦略のあり方については、2020年9月に経済産業省が発表した「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会 報告書〜人材版伊藤レポート〜」も参考になります。
2022年5月にはこのレポートの内容が更新されて「人材版伊藤レポート2.0」になっており、人的資本の重要性や人的資本経営実現に向けたアイディアが盛り込まれました。
開示すべき内容にも触れているので、記事後半で解説します。

開示参考観点

人的資本の開示について明確に定められている内容はなく、各企業の判断に委ねられています。
現時点においては、以下を参考にして自社独自の開示を進めようとしている企業が多いでしょう。

ISO30414に基づく開示内容

ISO30414では、下記11項目の指標をもとに人的資本を分析する手法が構築されています。

  1. 「コンプライアンス・倫理」
    パワハラ・セクハラなどハラスメント予防やコンプライアンス研修について
  2. 「コスト」
    総労働力コストや採用コストの可視化および人的資本経営に対する投資について
  3. 「ダイバーシティ」
    年齢・性別・国籍・障害の有無など従業員の多様性について
  4. 「リーダーシップ」
    ひとりの上司が抱える部下の人数や人事評価制度の透明性について
  5. 「組織文化」
    従業員定着率・従業員エンゲージメント・モチベーションについて
  6. 「健康・安全」
    労災発生件数・従業員の健康保持および向上に向けた取り組みについて
  7. 「生産性」
    従業員ひとり当たりの売上・利益やROI(投資対効果)について
  8. 「採用・異動・離職」
    人事プロセスを通した人的資本の構築および離職率・離職理由について
  9. 「スキル・能力」
    人事研修の内容・受講時間・参加率・発生費用について
  10. 「後継者計画」
    内部継承率・後継者候補準備率など次世代リーダーの育成について
  11. 「労働力」
    従業員数・支店間バランスなどマンパフォーマンスの正規創出について

人材版伊藤レポート2.0に基づく開示内容

人材版伊藤レポート2.0では、人的資本経営には3つの視点と5つの要素が欠かせないとしています。まず、3つの視点として挙げられているのは下記の通りです。

  1. 経営戦略と人材戦略の連動
    最終ゴールである経営戦略の実現に人材戦略を絡める重要性
  2. As is‐To be ギャップの定量把握
    現状と理想のギャップを常に数値で可視化する重要性
  3. 企業文化への定着
    人的資本の考え方を経営層だけでなく現場にも広く定着させる重要性

また、3つの視点を持ったうえで下記5つの要素を満たすことが人的資本経営の近道であると示しました。

  1. 動的人材ポートフォリオ
    異動・再配置・外部人材の獲得・アルムナイ(退職した社員)ネットワークなど流動的な組織構築
  2. 知・経験のダイバーシティ&インクルージョン
    キャリア人材や外国人労働者の採用・女性活躍推進・ナレッジ共有など
  3. リスキリング・学び直し
    経営層の学び直し促進・専門スキル向上に向けた教育・報酬と学びの連動など
  4. 社員エンゲージメント
    組織サーベイによるエンゲージメント可視化・モチベーション管理など
  5. 時間や場所にとらわれない働き方
    テレワーク・フレックスタイム勤務・フレキシブルワーク・DX化促進など

先に紹介したISO30414における11項目より、従業員のウェルビーイングに焦点を当てた項目と言えるでしょう。
自社の成長はもちろん、従業員の自己実現・キャリアアップ・働きやすさなどを重視していることが特徴です。

まとめ

人的資本の情報開示を進める際、注意すべき点として下記が挙げられます。

  • 自社の人的資本を正確に可視化すること
  • 自社が開示すべき「強みのある項目」を優先すること

まずは、自社の人的資本を正確に可視化することが欠かせません。
前述した項目を参考に、可能な限り数値で明らかにしていきましょう。
エンゲージメントやモチベーションなど数値化しづらい部分は、組織サーベイに代表されるようなHRテクノロジーを活用することもおすすめです。

そのうえで、自社が開示すべき「強みのある項目」を明らかにします。
人的資本の情報開示に関する明確な基準はなく、前述した内容を全て開示しなければいけないとは限りません。
むしろこれまで情報開示に取り組んでいる企業の事例を見ると、強みのある部分の数項目に絞っていることが大半です。
また、われわれ中小企業においては、開示に関わるコスト(時間・費用など)は過度にかけられません。
この点からも的を絞り込んで開示した方がよいでしょう。

この記事の監修・筆者

志水浩
志水浩専務執行役員 統括マネージャー
組織開発・教育研修コンサルタントして30年以上のキャリアを有し、上場企業から中小企業まで幅広い企業の支援を実施中。また、研修・コンサルティングのリピート率は85%以上を誇り、顧客企業・受講生からの信頼は厚い。管理者に対する、成果性の高い教育支援プログラム「パフォーマンス向上プログラム」の開発責任者。
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