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人的資本経営を実践するためにはKPIの設定が必要不可欠

人的資本経営を実践するためにはKPIの設定が必要不可欠

お役立ち情報

2022年11月21日

人材にかける費用を支出ではなく投資と考える「人的資本経営」の実現には、KPI(Key Performance Indicator、重要業績評価指標)の設定が必要不可欠です。
当記事では、人的資本経営を実践するためのステップやKPI設定のプロセス、設定のための重要ポイントを解説します。

人的資本経営の実施に必要な3ステップ

人的資本経営の実施に必要なのは、「経営戦略と人材戦略の紐づけ」「KPIの設定や施策の設定」「モニタリング・改善」の3ステップです。

①経営戦略と人材戦略を紐づける

人材戦略とは、採用活動・人材育成・人員配置などの人事全般に関する業務やオペレーションを改善し、組織の生産性を高めていくための戦略です。

人的資本経営においては、策定した人材戦略と経営戦略を紐づけることが重要と言われています。人材戦略と経営戦略の課題は、直結することが多いためです。

出典 経済産業省 事務局説明資料(経営戦略と人材戦略)

経営戦略と人材戦略の連携の重要性については、2020年9月に発表、2022年5月に改定された経済産業省の「人材版伊藤レポート2.0」でも解説されています。

しかし経済産業省の資料によると、人事マネジメントの課題として「経営戦略と人事戦略の紐づけができていない」と回答する企業が一番多くなっていました。

出典 経済産業省 事務局説明資料(経営戦略と人材戦略)

また、パーソル総合研究所が実施した「人的資本情報開示に関する実態調査」においても、人材戦略と経営戦略との紐づけができているとの回答は6割弱に留まっています。

紐づけができていない理由と対処法

紐づけができていない理由として、次のケースが考えられます。

  • 人材戦略を立案し提案したが経営陣に理解されなかった
  • 人材戦略を立案したメンバーの中に人事部が含まれていない(経営陣のみで決定された)
  • 経営陣と人事部のお互いが意図をつかみきれず、意見が噛み合わない

上記の問題を解決するには、「定量的なデータを用いて説得力のある意見を出す」「経営陣と人事部で定期的にコミュニケーションを取る」などの行動が必要です。

経営戦略と人材戦略の連動が実現できているケースは、経営陣と人事部の距離が近いほど多く見られます。嘘や誤魔化しのない、クリアな関係性を構築しましょう。

経営陣と人事部との連携が取れるようになった後は、人的資本経営の達成や目指すべき企業の在り方など、最終的なゴールや将来像であるKGI(Key Goal Indicator)を設定します。

②KPIの考案と設定

経営戦略・人事戦略についての方向性(KGI)や、経営陣と人事部との連携が決まった後は、KPIや施策について考案し、具体的に設定します。KPIを設定するメリットは次のとおりです。

  • KPIの考案・設定の過程で自社ビジネスの強み・弱みが分析でき他の施策にも活用できる
  • 見える化され全従業員が進捗状況や目標を確認しやすくなり、モチベーションアップや意識付けにつながる
  • 従業員満足度や従業員エンゲージメントをKPIに設定することで、離職率低下・定着率向上などの効果も見込める
  • チームが共通の目標に迎えるため、効率化やコミュニケーションの円滑化などが期待できる

人的資本経営のKPIにおいては、人事データなど定量化が難しい部分は無理に設定する必要はありません。

設定したKPIには優先順位を付け、優先度の高いKPIから取り組んでいきましょう。

③モニタリング・改善

KPIを設定した後は、KPI達成のための施策を実行します。実行過程・結果はモニタリングを行い、KPIについての効果検証を行います。効果検証の方法として挙げられるのは次のとおりです。

  • 研修受講率や残業時間などの定量的なものは人事データの整理
  • 従業員満足度(給与や福利厚生など)や、従業員エンゲージメント(会社への愛着心など)などの定性的なものはエンゲージメントサーベイの実施

人的資本は定量化・数値化するのが難しい側面もあるため、実行したプロセスの難易度やクオリティなどを軸にした評価となります。経営陣・人事部・現場の社員同士の議論も交えながら、成功点や反省点をまとめましょう。

効果検証で浮かび上がった新たな反省点は再度分析し、次のKPI設定での改善に利用します。人的資本経営は1回の施策で終わるのではなく、長期的かつ継続的にPDCAを回すことが重要です。

KPI設定において重要なポイント

人的資本経営のKPI設定で重要なポイントとして、「従業員の人事データをしっかり収集しておく」「独自性あるKPIを設定する」「KPIの設定・実行できるメンバーを準備する」の3つを解説します。

従業員の人事データをしっかりと収集しておく

人的資本経営を成功させるには、人事評価・異動履歴・勤務期間といった基本の人事データだけでは不足するケースが多数見られます。

人的資本経営のメインは「人」です。人を正しく評価できる指標や評価ポイントの参考になる人事データは、しっかり収集しておきましょう。

具体的には志望キャリア・得意分野・スキルなど、社員個人にフォーカスしたデータが必要になります。

独自性のあるKPIを設定する

KPIを設置する際は、他者との比較指標となる共通項目だけでなく、自社ならではの独自性を盛り込むことが重要です。

独自性があるKPIを設定することには、「経営層のビジョンが社員へ伝わりやすくなる」「企業の魅力を入社希望者へ伝える」といったメリットがあります。

人的資本に関しては、外部へ開示する動きが世界中で進んでいます。現在は有価証券報告書の提出が必要な大企業のみ公開義務が2023年より始まりますが、投資家・転職者・学生からの信頼を獲得するために、今後は中小企業・小規模事業者も対応が必要になるでしょう。

ただし外部の顔色を伺いすぎるなどして、開示自体が目的化することは避けてください。達成できない、または達成しても効果が薄いKPIでは実行する意味がほとんどありません。あくまで設定するKPIの前提は、自社の企業価値を高めることです。

KPIの設定・実行できるメンバーを準備する

設定したKPIを達成するには、人事領域において高い専門性を持つメンバーや独自性を持つ企画を立案・実行できる者など、プロジェクトへ関わる社員の能力も必要となります。

社内研修の実施やアウトソーシングの活用など、人的資本経営のスペシャリストの育成・外注なども視野に入れましょう。

人的資本経営においてはKPIの設定が重要

人的資本経営においてKPIを設定する際は、まず経営戦略と人材戦略の紐づけが重要です。経営陣と人事部はお互いに連携し、人事データの共有やKPIや評価方法の設定、モニタリング・改善を進めていきましょう。

人的資本経営のKPI設定について疑問点などあれば、弊社新経営サービスにご相談ください。専門資格や経営コンサルの実績を持つ弊社スタッフが、企業の目標や問題点に応じたKGI・KPIの設定をサポートします。

この記事の監修・筆者

志水浩
志水浩専務執行役員 統括マネージャー
組織開発・教育研修コンサルタントして30年以上のキャリアを有し、上場企業から中小企業まで幅広い企業の支援を実施中。また、研修・コンサルティングのリピート率は85%以上を誇り、顧客企業・受講生からの信頼は厚い。管理者に対する、成果性の高い教育支援プログラム「パフォーマンス向上プログラム」の開発責任者。
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